金沢市の住宅街に、伝統工芸品・加賀友禅をつくる工房がある。雪の舞う2月下旬、外国人6人が中に入っていった。
加賀友禅作家の毎田仁嗣(50)が出迎え、着物ができるまでの工程を布地を見せながら説明した。工房内を案内し、下絵に色を塗る体験もしてもらった。
一行は観光客ではない。富裕層向けに旅行を企画する、海外の旅行会社の経営者たちだ。日本政府観光局(JNTO)の招待で来日し、視察に訪れたのだった。
「コロナ禍後、衛生環境がいい日本の人気は高まっている。顧客には金沢も紹介したい」。カナダ・バンクーバーで旅行会社を経営するギデオン・ヌリックは笑みを見せた。
JNTOは2017年からこうした視察を企画。そのかいもあってか、金沢市観光協会によると工房見学にかかる費用は1人平均約5万円と安くはないが、外国人が大勢押し寄せる。「見学者の8割が外国人観光客。日本人で来るのは着物の関係者くらい」(毎田)。工房で販売している加賀友禅の生地を使ったガラスパネルは、大きいものは約200万円するが、外国人の多くが購入するという。
増える富裕層インバウンド、足りぬ五つ星ホテル
昨年、日本を訪れた外国人は…